Meta、米国史上最大級の原子力エネルギー購入者に
Metaが、米国史上最大級の原子力エネルギー企業購入者の一つに正式に名を連ねた。このテック大手は、2035年までに6.6ギガワット(GW)の原子力発電を確保するための、3つの主要エネルギー供給企業との画期的な一連の合意を発表した。
これを分かりやすく言うと、1600万から1700万人の米国市民の年間電力消費量に相当する規模だ。AIの急速な発展に伴い、データセンターの電力需要が爆発的に増加する中、Metaは原子力という安定的でカーボンフリーな電力源を大規模に確保する戦略を選択した。
この記事では、Metaの原子力エネルギー戦略の詳細、3つのパートナー企業との契約内容、そしてAI時代における電力確保の重要性について詳しく解説する。
6.6GW契約の全体像:3社との画期的な提携
Metaの原子力エネルギー契約は、3つの異なる企業との提携から構成されている。それぞれが独自の技術と発電能力を持ち、合計で6.6GWという膨大な電力を供給する計画だ。
| パートナー企業 | 発電能力 | 技術 | 稼働開始 |
|---|---|---|---|
| Vistra | 2,176 MW(2.2GW) | 既存原子力発電所 | 即時 |
| TerraPower | 最大2.8GW + 1.2GW蓄電 | Natrium先進炉 | 2032-2035年 |
| Oklo | 最大1.2GW | Aurora高速炉 | 2030年以降 |
これらの契約により、Metaは短期的には既存の原子力発電所から電力を確保しつつ、中長期的には次世代原子炉技術からの供給を受けるという、二段階の戦略を実現している。
Vistraとの20年間PPA:既存原子力発電所からの即時供給
Metaの原子力戦略の第一弾は、米国の大手電力会社Vistraとの20年間の電力購入契約(PPA: Power Purchase Agreement)だ。この契約により、Metaは既存の原子力発電所から2,176メガワットの電力を確保する。
供給元となる原子力発電所:
- Perry原子力発電所(オハイオ州)
- Davis-Besse原子力発電所(オハイオ州)
- Beaver Valley原子力発電所(ペンシルベニア州)
これらの発電所は既に稼働中であり、Metaは契約締結後すぐに安定した電力供給を受けることができる。特にオハイオ州の2つの発電所は、Metaが建設を進めるNew Albany(オハイオ州)のPrometheusスーパークラスターに近接しており、送電効率の面でも優れている。
TerraPower:ビル・ゲイツの次世代原子炉技術
TerraPowerは、ビル・ゲイツが共同設立した次世代原子力技術企業だ。Metaとの契約では、最大8基のNatrium炉を建設し、2.8GWのベースロード電力と1.2GWのエネルギー貯蔵能力を提供する計画となっている。
Natrium炉の革新的な特徴:
| 特徴 | 詳細 |
|---|---|
| 冷却材 | 液体ナトリウム(従来の水冷式より効率的) |
| エネルギー貯蔵 | 溶融塩蓄熱システム内蔵 |
| 柔軟性 | 需要に応じて出力調整可能 |
| 安全性 | パッシブ安全システム採用 |
TerraPowerからの電力供給は2032年から2035年にかけて段階的に開始される予定だ。これにより、MetaはAIインフラの成長に合わせて電力供給を拡大できる。
Oklo:Aurora高速炉キャンパス
Okloは、小型モジュラー原子炉(SMR)を開発する企業で、Meta向けにAurora高速炉キャンパスを建設する計画だ。オハイオ州Pike Countyに設置されるこのキャンパスは、最大1.2GWの発電能力を持つ。
Aurora高速炉の特徴:
- 高速中性子炉:使用済み核燃料を再利用可能
- モジュラー設計:需要に応じて段階的に拡張
- 長寿命:燃料交換なしで最大20年稼働
- コンパクト:従来の原子炉より小型で設置場所の自由度が高い
Okloからの電力供給は2030年以降に開始予定で、Metaの次世代AIインフラを支える重要な電力源となる。
なぜ原子力なのか:AIデータセンターの電力課題
Metaが原子力に大規模投資する背景には、AI時代特有の電力課題がある。大規模言語モデル(LLM)の訓練や推論には、膨大な計算リソースと電力が必要だ。
AI電力需要の急増:
| 要因 | 影響 |
|---|---|
| LLM訓練 | 単一モデルで数百MW・数ヶ月の電力消費 |
| 推論需要 | ユーザー増加で24時間365日の安定供給必要 |
| GPUクラスター | 冷却を含む電力効率が重要課題 |
| 再生可能エネルギー限界 | 天候依存で24時間安定供給が困難 |
原子力は、24時間365日安定稼働し、カーボンフリーであり、土地面積あたりの発電効率が高いという特徴を持つ。これらの特性がAIデータセンターの要件と完璧にマッチしている。
Prometheusスーパークラスター:Metaの次世代AIインフラ
これらの原子力契約の主な目的は、オハイオ州New Albanyに建設中のPrometheusスーパークラスターへの電力供給だ。このスーパークラスターは、MetaのAI研究と製品開発を支える中核インフラとなる。
Prometheusの推定規模:
- 設置GPU数:数十万〜数百万基
- 電力消費:数GW規模
- 用途:Llama大規模言語モデルの訓練、Meta AIサービスの推論
- 特徴:原子力による安定供給でダウンタイムを最小化
オハイオ州を中心にVistraの発電所、TerraPowerのNatrium炉、OkloのAuroraキャンパスが配置されることで、送電ロスを最小化しながら大規模な電力を供給できる体制が整う。
競合他社との比較:テック大手の原子力戦略
Metaの6.6GW契約は、テック業界における原子力投資の最大規模の一つだ。他のテック大手も原子力に注目しているが、Metaの規模は突出している。
| 企業 | 原子力契約規模 | 主なパートナー |
|---|---|---|
| Meta | 6.6GW(2035年まで) | Vistra、TerraPower、Oklo |
| Microsoft | 約2GW | Constellation(Three Mile Island再稼働) |
| 約500MW | Kairos Power(SMR) | |
| Amazon | 約950MW | Talen Energy(Susquehanna) |
Metaの6.6GWは、他社を大きく上回る規模であり、AI競争において電力を戦略的優位性の源泉として捉えていることが明確だ。
まとめ:AI時代の電力戦争でMetaがリード
Metaの6.6GW原子力契約は、AI時代における電力確保の重要性を示す画期的な事例だ。
主要ポイント:
- 規模:6.6GW、1600-1700万人分の年間電力消費量に相当
- パートナー:Vistra(既存炉)、TerraPower(Natrium)、Oklo(Aurora)
- 期間:20年間のPPA、2030-2035年にかけて段階的に稼働
- 目的:Prometheusスーパークラスターへの安定電力供給
- 戦略的意義:AI競争における電力の優位性確保
原子力は、AIインフラに必要な24時間安定供給、カーボンフリー、大規模発電という3つの要件を同時に満たす唯一の選択肢だ。Metaの大胆な投資は、AI時代における「電力戦争」の本格的な幕開けを告げている。
今後、他のテック大手も追随する形で原子力投資を拡大することが予想される。AIの発展と原子力の復権が同時に進む2020年代後半は、エネルギーと技術の両分野において歴史的な転換点となるだろう。


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