AIの出力品質を決めるのは「プロンプト」ではなく「ロジック」
ChatGPTやClaudeに論文を書かせても、なぜか読みにくい。構成がバラバラで、何を言いたいのかわからない。そんな経験はありませんか?
多くの人は「プロンプトの書き方が悪い」と考えます。しかし、本当の原因は別のところにあります。それは土台のロジックが破綻していること。どんなに優秀なAIでも、論理構造が崩れた指示からは、論理的な文章を生成できないのです。
この問題を解決する鍵が「パラグラフライティング」です。大阪大学総合図書館が2024年2月に開催した講座資料は、この技術を10分で学べる優れた教材として、SNSで話題になっています。
本記事では、大阪大学の資料を基に、パラグラフライティングの本質と、AI時代における活用法を徹底解説します。
パラグラフライティングとは何か
パラグラフライティングとは、1つの話題について書かれたパラグラフ(段落)を組み合わせて、論理を展開していく文章技法です。欧米では学術論文からビジネス文書まで、あらゆる場面で基本とされています。
日本語の「段落」と似ているようで、実は大きく異なります。日本の段落は「話題の区切り」程度の意味ですが、パラグラフには明確な構造的ルールが存在します。
| 項目 | 日本語の段落 | パラグラフ |
|---|---|---|
| 構成ルール | 曖昧・感覚的 | 明確な3要素構造 |
| 主張の位置 | 最後に結論が多い | 最初に結論(トピックセンテンス) |
| 1段落1話題 | 守られないことも多い | 厳格に守る |
| 読者への配慮 | 書き手主導 | 読み手主導 |
パラグラフの3要素:TS・SS・CS
パラグラフは、以下の3つの要素で構成されます。この構造を理解することが、パラグラフライティング習得の第一歩です。
1. トピックセンテンス(TS)
そのパラグラフで伝えたいメッセージを、明確かつ簡潔に反映させた文です。パラグラフの「見出し」のような役割を果たします。
特徴:
- パラグラフの最初に置く
- 1つの主張だけを述べる(複数の主張を入れない)
- 読者に「これから何について述べるか」を宣言する
- 具体的すぎず、抽象的すぎないバランス
2. サポーティングセンテンス(SS)
トピックセンテンスの内容を詳しく説明し、根拠を示す文です。複数の文で構成されます。
含めるべき要素:
- 理由:なぜその主張が正しいのか
- 具体例:実際のケースや事例
- データ・統計:客観的な裏付け
- 引用:先行研究や専門家の意見
3. コンクルーディングセンテンス(CS)
パラグラフの内容をまとめ、次への橋渡しをする文です。省略されることもありますが、長いパラグラフでは重要な役割を果たします。
実践例:良いパラグラフと悪いパラグラフ
具体例で理解を深めましょう。同じ内容を「悪い例」と「良い例」で比較します。
❌ 悪い例(トピックセンテンスがない)
最近、AIツールを使う人が増えています。ChatGPTは便利です。でも、使い方を間違えると問題になります。私の友人も論文でAIを使って怒られました。大学によってはAIの使用を禁止しています。AIにはメリットもデメリットもあります。将来はもっと普及するでしょう。
問題点:
- 結局何を言いたいのかわからない
- 複数の話題が混在している
- 主張が最後まで明確にならない
✅ 良い例(トピックセンテンスが明確)
学術論文でのAI活用は、適切なルールの下で行えば研究効率を大幅に向上させる。(←トピックセンテンス)例えば、文献レビューの要約作業では、従来3日かかっていた作業が数時間に短縮できる。また、校正補助として使用することは多くの大学・ジャーナルが倫理上問題ないと認めている。ただし、丸ごと書かせることは研究倫理に反するため、構造化や校正のサポートとして活用すべきである。(←サポーティングセンテンス+コンクルーディングセンテンス)
改善点:
- 最初の1文で主張が明確
- 具体例(時間短縮)で裏付け
- 最後に条件付きの結論
なぜAI論文に「パラグラフライティング」が必須なのか
ChatGPTやClaudeなどの生成AIは、実はパラグラフライティングの原則に基づいてプログラミングされていると言われています。なぜなら、これらのAIはアメリカで開発されており、欧米の文章構造が基礎になっているからです。
| AIへの指示 | パラグラフ構造なし | パラグラフ構造あり |
|---|---|---|
| 出力の論理性 | 散漫・矛盾が発生 | 一貫性のある論理展開 |
| ハルシネーション | 発生しやすい | 抑制される傾向 |
| 構成の質 | 話題が飛びやすい | 整理された構成 |
| 修正の容易さ | どこを直すか不明確 | 問題箇所が特定しやすい |
AIへのプロンプト設計にも活用
パラグラフライティングを理解すると、AIへのプロンプト設計も劇的に改善します。
効果的なプロンプト例:
「以下の構成で論文の序論を書いてください:
1. トピックセンテンス:研究の背景と問題提起
2. サポーティングセンテンス:先行研究の課題、本研究の意義
3. コンクルーディングセンテンス:研究目的の明示」
このように「型」を理解させると、ChatGPT・Geminiの出力精度は劇的に向上します。
10分で身につける実践ステップ
大阪大学の講座資料を基に、すぐに実践できるステップをまとめます。
Step 1:1パラグラフ1トピックを徹底する
まず、1つのパラグラフで複数の話題を扱わないことを意識します。
- 書きたいことをリストアップ
- 話題ごとにグループ分け
- 1グループ = 1パラグラフ
Step 2:トピックセンテンスから書き始める
パラグラフを書く際は、最初にトピックセンテンスを完成させることが重要です。
- 「このパラグラフで一番言いたいことは何か」を自問
- 1文で表現できるまで考える
- 曖昧な表現(「〜について述べる」)を避ける
Step 3:サポーティングセンテンスで肉付け
トピックセンテンスが決まったら、それを支える証拠を追加します。
- 「なぜそう言えるのか」→ 理由
- 「例えば」→ 具体例
- 「データによると」→ 統計・引用
Step 4:見直しはトピックセンテンスだけ読む
完成後、各パラグラフのトピックセンテンスだけを連続で読むことで、論理の流れをチェックできます。
- トピックセンテンスだけで話が繋がるか
- 重複や矛盾がないか
- 論理の飛躍がないか
ChatGPTによるパラグラフ添削の活用
ChatGPTはパラグラフライティングの原則を理解しているため、添削ツールとして非常に有効です。
添削依頼のプロンプト例
「以下の文章をパラグラフライティングの観点から分析してください。
・トピックセンテンスは明確か
・サポーティングセンテンスは十分か
・1パラグラフ1トピックになっているか
問題点があれば修正案を提示してください。」
このように依頼すると、ChatGPTはトピックセンテンスの問題点を指摘し、パラグラフを分割する提案などを行ってくれます。
論文以外での活用場面
パラグラフライティングは学術論文だけでなく、あらゆるビジネス文書で効果を発揮します。
| 場面 | 活用方法 | 効果 |
|---|---|---|
| メール | 冒頭で結論・依頼を明示 | 相手が即座に行動可能 |
| 提案書 | 各セクションにトピックセンテンス | 斜め読みでも内容把握 |
| 報告書 | 要約→詳細の構成 | 上司の意思決定が迅速化 |
| ブログ記事 | 見出し=トピックセンテンス | SEO効果・読者離脱防止 |
| AIプロンプト | 構造化された指示 | 出力品質の安定化 |
まとめ:プロンプトより先にロジックを磨け
大阪大学のパラグラフライティング講座が教えてくれる最も重要なことは、「良い文章の土台はロジックである」という点です。
AIがどれほど進化しても、この原則は変わりません。むしろ、AIを効果的に使うためにこそ、人間側のロジック力が問われるのです。
10分で学べるポイント:
- 1パラグラフ1トピックを厳守
- トピックセンテンスは最初に置く
- サポーティングセンテンスで根拠を示す
- 見直しはトピックセンテンスだけ読む
- AIの添削機能を積極的に活用
パラグラフライティングは、一度身につければ一生使えるスキルです。AI時代だからこそ、この「人間のロジック力」を磨くことが、質の高いアウトプットへの最短経路となるでしょう。
参考資料:


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