「なんてこった」:数百体のAIエージェントが1週間でブラウザを構築
AI開発の歴史に新たなマイルストーンが刻まれた。AIコードエディタ「Cursor」のCEOMichael Truell氏(25歳)が、驚くべき発表を行った。
数百体のGPT-5.2エージェントを連携させ、1週間でブラウザをゼロから自律的に構築したというのだ。
Michael Truell氏(Cursor CEO):
「CursorではGPT-5.2でブラウザを構築しました。1週間途切れることなく稼働し、数千のファイルにまたがる300万行以上のコードです。レンダリングエンジンはRustでHTML解析、CSS処理までゼロから実装しました」
プロジェクト「FastRender」:1週間で何が起きたのか
Cursorチームが開発したブラウザプロジェクトは「FastRender」と名付けられた。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| プロジェクト名 | FastRender |
| 開発期間 | 1週間(途切れることなく稼働) |
| 総コード行数 | 300万行以上 |
| ファイル数 | 数千ファイル |
| 使用モデル | GPT-5.2(数百体のエージェント) |
| 主要言語 | Rust |
ゼロから実装されたレンダリングエンジン
最も驚くべきは、既存のレンダリングエンジン(WebKit、Blink等)を一切使わず、完全にゼロから実装したという点だ。
| コンポーネント | 実装内容 |
|---|---|
| HTML解析 | HTMLパーサーをRustで実装 |
| CSSカスケード | CSS優先順位・継承処理 |
| レイアウトアルゴリズム | ボックスモデル・フレックスボックス等 |
| テキストシェイピング | フォント描画・テキスト配置 |
| ペイント機能 | 画面描画処理 |
| JavaScript VM | カスタムJavaScript仮想マシン |
これらすべてを、AIエージェントが自律的にコーディングした。人間の開発者が設計とワークフローを定義し、実装はエージェントに委ねられた。
なぜGPT-5.2なのか:Claude Opus 4.5との比較
Truell氏によると、このプロジェクトの成功の鍵はOpenAIのGPT-5.2にあった。2025年12月にリリースされたこのモデルは、長時間の自律作業に特化している。
| 特性 | GPT-5.2 | Claude Opus 4.5 |
|---|---|---|
| 長時間タスク | ✓ 優秀 | △ 早めに停止傾向 |
| 指示への忠実性 | ✓ 高い | △ ショートカット傾向 |
| フォーカス維持 | ✓ ドリフトしない | △ 脱線しやすい |
| 実装の完全性 | ✓ 精密かつ完全 | △ 制御を早く返す |
Cursorチームの発見:
「GPT-5.2モデルは拡張自律作業において非常に優れています。指示に従い、フォーカスを維持し、ドリフトを避け、精密かつ完全に実装します。Opus 4.5は早めに停止し、都合の良いときにショートカットを取り、すぐに制御を返す傾向があります」
「シンプルなウェブサイトは正しくレンダリングされる」
では、このAI製ブラウザは実際に動くのか?Truell氏の回答は「kind of works(まあ動く)」だ。
現時点での性能:
- シンプルなウェブサイトは高速かつほぼ正確にレンダリング
- 複雑なサイト(Gmail、YouTube等)は未対応
- WebKit/Chromiumとのパリティには程遠い
- しかし「これほど動くとは予想外」とチームも驚愕
規模の比較:300万行 vs Chromiumの3500万行
FastRenderの300万行は確かに膨大だが、既存ブラウザと比較するとどうか。
| ブラウザ | コード行数 | 開発期間 |
|---|---|---|
| FastRender(AI製) | 300万行以上 | 1週間 |
| Chromium | 3500万行以上 | 15年以上 |
| Firefox | 2000万行以上 | 20年以上 |
FastRenderはChromiumの約10%未満の規模。プロダクションレディなソフトウェアには程遠いが、1週間でここまで到達したという事実自体が革命的だ。
Cursorの他のAIプロジェクト
ブラウザだけではない。Cursorチームは他にも大規模なAIコーディングプロジェクトを進めている。
| プロジェクト | コード行数 | 概要 |
|---|---|---|
| JavaLSP | 55万行 | Java言語サーバー |
| Windows 7シミュレーター | 100万行以上 | OSシミュレーション |
| Excelクローン | 160万行 | スプレッドシートアプリ |
業界の反応:「未来の驚くべき一端」
この発表は、AI業界に大きな衝撃を与えた。
Greg Brockman(OpenAI):
「未来の驚くべき一端を見せてくれた(amazing glimpse of the future)」
批判的な声も
一方で、懐疑的な意見も少なくない:
- 「Chromiumからの『インスピレーション』では?」:既存ブラウザのコードを参考にした可能性
- 「300万行のAIコードを誰がデバッグするのか」:保守性への懸念
- 「人間が設計し、AIが実装しただけ」:完全自律ではないとの指摘
重要な制限事項
このプロジェクトには明確な制限がある。
| 制限 | 詳細 |
|---|---|
| プロダクションレディではない | 商用ブラウザには程遠い品質 |
| 人間の設計が必要 | エージェントは自発的に設計を決めていない |
| 複雑なサイト非対応 | Gmail、YouTube等は動作しない |
| デバッグの困難さ | 300万行のAIコードの保守は未知数 |
人間の開発者が目標、役割、ワークフローを定義し、エージェントはその枠内で実装を担当した。完全な「自律」ではない点は重要だ。
これが意味すること:AIコーディングの新時代
FastRenderプロジェクトは、ソフトウェア開発の未来を示唆している。
AIコーディングの進化
- 「コード補完」から「自律実装」へ:AIの役割が根本的に変化
- マルチエージェント協調:数百体のエージェントが連携する時代
- 長時間稼働:1週間途切れなく動作するAI開発
- 大規模コードベース:数百万行規模のAI生成コード
開発者の役割変化
- 設計者・監督者へシフト:コーディングではなくアーキテクチャ設計
- 品質管理の重要性:AIが書いたコードのレビュー・検証
- プロンプトエンジニアリング:エージェントへの的確な指示出し
まとめ:「驚愕」の1週間
CursorのFastRenderプロジェクトは、AIコーディングの可能性を大きく押し広げた。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 達成 | 1週間で300万行のブラウザを構築 |
| 技術 | Rustレンダリングエンジンをゼロから実装 |
| 鍵 | GPT-5.2の長時間自律作業能力 |
| 限界 | プロダクションレディではない |
「シンプルなウェブサイトが高速かつほぼ正確にレンダリングされる」—この事実だけで、私たちは新しい時代に入ったことがわかる。
AIが300万行のコードを1週間で書く。その中にはRustのレンダリングエンジン、HTMLパーサー、CSSプロセッサ、カスタムJavaScript VMまで含まれる。
ソフトウェア開発の歴史において、2026年1月は転換点として記憶されるかもしれない。
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